anonyme cahier

四方山事

竜に育てられた少女がなぜ竜殺しになったのか

 

 なぜその少女がそこにいたのか、どうやってたどり着いたのか、なにがあったのかは誰も知らない。

 ただ、少女は生き延びた。生き延びて、竜に育てられた。

 

 こちらの作品は第28回電撃小説大賞銀賞作品となります。

 電撃大賞とは、年に一度行われているもので、今のKADOKAWAになる前からずっと存在している賞で、たくさんの有名作家、アニメ化作品を輩出しており、その応募総数が半端ない。

 ライトノベル業界の中でも、「電撃文庫」が突出している一番の理由は、ティーンズ向けであり、なおかつ様々なジャンルの作品を出版している、というところでしょうか。

 

 様々なジャンル、としては「ラノベ」という言葉が生まれる前、ヤングアダルト文庫と呼ばれる時代からあった(当時は、「漫画風のイラストが表紙の本」のことをそのように呼んでいたそうです)角川スニーカー文庫が有名で、直木賞作家である米澤穂信氏のアニメ化作品『氷菓』も出版されていました。

 他にもいろんなジャンルを出してたレーベルもあるのに、なぜみんな電撃文庫に応募するのか?

 読むほうの感覚としては、「これはラノベだろうか?」という作品も多いです。一般書籍として出してもいいのではないだろうか。はたまた、どっちとも言えない。

 最近、ライトノベルと一般文芸の間のレーベルとして、新潮NEX、メディアワークス文庫、タイガ文庫……各社出版しています。

 メディアワークスというのが、一時期電撃文庫を出版していた会社だったはず。

 電撃文庫というのは、それら新ジャンルの原点的なポジションだと個人的に思います。

 

 「ライトノベル」の中でも、それを愛読する人たちが独自に作り出したジャンルに「質ラノベ」というものがあります。こちらの定義は詳しく知らないのですが、キャラクターで読ませるのではなく、ストーリー性の高さ――うまく説明できないのですが、キャラクター絵がなくてもよくないか? といった、「ティーンズ向け」に留まらない作品のことをそう呼んでいたと個人的に認識しています。

 そういった作品が、電撃文庫作品、電撃大賞受賞作品に多かったと思います。

 

 余談が本番になりそうなので、話を戻します。

 こちらの作品も、個人的に「質ラノベ」に含まれると思っています。

 それでいて、とある作品の影響をすごく受けているなと。そのことに関しては作者さんがあとがきにて告白していますが、作品名、作家名は伏せております。

 ただ、このブログを最初から読んでいる人ならば、私の予想を察していただけるだろうと。

 

 ティーンズ向け、少年少女向けといったら、今も昔も変わらず、勧善懲悪が好まれると思うのですが、そこをあえて曲げた作品です。

 竜に育てられて、なぜ竜殺しとなったのか?

 竜に育てられたこと、そこに何か伏線があるのではないか? タイトルから色々と想像が膨らみますよね。

 あらすじを読んでいただくと、この物語が悲劇でしかないことは一目瞭然なのですが、何があったのかは実際に読んでいただきたい。

 

 ちなみに、シリーズ2作目が発売されていますが、こちらは過去編になります。