「ぼくのエリ 200歳の少女」という映画作品がある。そしてこの原作にあたる「モールス」を映画化した「モールス」という作品がある。
私はこの「モールス」を見ていたので、「ぼくのエリ~」のほうも見たいと思っていた。
そこに突然現れた「ぼくのデコ」。
すぐに「ぼくのエリ」のオマージュだとわかった。「ぼくのエリ」では、少年と少女の出会いが描かれているのだが、「ぼくのデコ」は副題の通り、「ぼく」こと主人公のマットの兄デコがヴァンパイアになって戻ってくるというホラーコメディ作品だ。
シッチェス映画祭で公開された作品でもある。
このシッチェス映画祭は世界最古で最大のファンタジー、SF、ホラー作品を扱う映画祭だ。過去のノミネート作品はいくつか見ていて、どれも比較的真面目なホラーだったので、コメディタッチでも、怖いところはきっと怖いはず、そう思って見た。
――とってもコメディだった。
男子トイレで女性のヴァンパイアに襲われたデコ。すべて血を吸われなかった彼はヴァンパイアとなった――が、本人はそのことに気づいていない。
追い出された我が家に帰るために歩いていると、日光に焼かれて肌から煙が出る。それでも「なぜか日差しが熱い」程度にしか思わないデコ。かなり抜けている。
一方で弟のマットはしっかり者だ。兄の話を聞きすぐにヴァンパイアに襲われたのだと理解する(海外ではゾンビだらけの世界で生き延びる方法を記した本が発売されいるためか「そんな非科学的な」と一蹴するような描写がほぼない。とりあえずコメディだし)
とにかく始まりのテンポがいい。カメラのアングルもいい仕事をしている。
突然始まるヴァンパイアを倒すための訓練。普通にヴァンパイアが増えている街。AB型Rhマイナス(日本では2000人に1人)に狂喜乱舞するとか知識がやたら細かい。
どんなラストを迎えるかはお楽しみということで、笑えるホラーを見たい人におすすめです。
※流血、グロ、ちょこっとエッチでも大丈夫な人のみに限ります。血しぶきの水圧がなんかバグってます。
一方、「モールス」のほうは切ないお話となっております。
あくまで名前だけのオマージュです。内容は全く違うのでご注意ください。
「ぼくのデコ 23歳のヴァンパイア兄貴」はU-NEXTでは見放題です。
ところで、日本語では「デコ」っていったら「おでこ」のことですが、本作が舞台のアイルランドでは一般的な名前なのかなと。「デコレーション」という言葉の短縮形でもあるけれど、他の登場人物が比較的一般的な名前のせいかだいぶ兄の名前が尖ってるなあと思いながら見てました。